我々の研究室では,土壌を採取するだけでなく,土壌を取り巻く環境や人為活動を理解するためのフィールド調査を重視しています。このページでは,これまでに調査で訪れたフィールドの一部を紹介しています。
Fukushima 2011-
2010年代,30代の研究生活の大半を注いだ福島。数多くの依頼講演や総説・解説記事の依頼執筆をこなしながら,福島の農作物の汚染リスクが低いことの実証を目指しました。個人の努力の限界とともに,仲間の重要性を学んだ10年です。
主な成果:
Nakao, A., Ogasawara, S., Sano, O., Ito, T., Yanai, J., 2014. Radiocesium sorption in relation to clay mineralogy of paddy soils in Fukushima, Japan. Sci. Total Environ. 468–469, 523–529.
Cameroon 2009-2013
京大土壌研ポスドク時代の主な調査地です。メインの研究が大失敗に終わり絶望した苦い思い出(→p116~)もありますが,人生観を変える貴重な経験を得る機会でもありました。
主な成果:
Nakao, A., Sugihara, S., Maejima, Y., Tsukada, H., Funakawa, S., 2017. Ferralsols in the Cameroon plateaus, with a focus on the mineralogical control on their cation exchange capacities. Geoderma 285, 206–216.
Kinabalu (Malaysia) 2015-2017
東南アジア最高峰キナバル山の標高数百~3000mに標高系列で分布する2種類の地質帯で土壌調査と鉱物埋設調査を実施しました。北山兼弘先生が開拓された調査地です。貴重なデータの大部分をまだ論文化できていない・・・!
主な成果:
Nakao, A., Tomita, M., Wagai, R., Tanaka, R., Yanai, J., Kosaki, T., 2019. Asian dust increases radiocesium retention ability of serpentine soils in Japan. J. Environ. Radioact. 204, 86–94.
Philippine 2016-2018
矢内教授の科研プロジェクトの分担者として,フィリピンの水田土壌調査を行いました。50年以上前に久馬先生が調査した水田を掘り返し,土に記録された緑の革命の爪痕を探る旅です。都市化により消滅した水田が多い一方で,地方では水牛を駆使した伝統農法も残っていました。
主な成果:
Nakao, A., Masai, F., Timbas, N., Medina, S., Abe, S.S., Tanaka, S., Yanai, J., 2021. Changes in lowland paddy soil fertility in the Philippines after 50 years of the Green Revolution. Soil Sci. Plant Nutr. 67, 446–459.
Arizona 2015-2017
クリティカルゾーン研究の中心地のひとつ,アリゾナ州ツーソン市のレモン山で,標高系列での土壌の発達と機能性の変化について調べました。2017年にサバティカルで1年間過ごした思い出の場所でもあります。
Yosano (Kyoto) 2021-
地表にわずか1%しかない蛇紋岩という珍しい地質がどのようなお米をつくるのか?日本版テロワールの実証を目指し,まさ農園の木村夫妻,与謝野町農林環境課の協力を得て研究を継続しています。